OS と CPU (中央処理装置)は密接な関わりがあります。特に、PC/AT 互換機 (Windows パソコン)では、CPU と OS の様々な組み合わせが存在し、搭載された CPU によって最適な OS のラインナップは異なります。また、選択を誤まると CPU によっては全く動作しない OS もあります。
2005年下四半期から2007年現在にかけて、32bit CPU から 64bit CPU の移行期でもあり、また、1CPU 辺りに2つ以上のコアを詰め込む、マルチコア CPU の普及に伴い、一般の方には少し分かりにくい状況にあります。
参照 => ハードウェア構成により異なる Windows OS の選び方
特に、2005年下四半期移行、デュアル(2)コア、クアッド(4)コア、64bit への移行期に入っており、パソコンの絶対的なパフォーマンス向上は停滞しています。
新しく購入するパソコンをじっくり検討するには良い機会ですので、注目したいポイントをパソコン初心者にもわかり易く説明します。 これらの概要をおさえておくと、新しくパソコンを購入する上で参考になる事も多いと思います。
現在発売されているパソコンの心臓部でもある CPU (中央処理装置)には、設計上の違いから 32bit CPU と 64bit CPU が存在します。32bit CPU は既に出荷されていませんので市場から消えるのは時間の問題です。
CPU | Apple | Intel | AMD |
---|---|---|---|
デュアルコア 64bit 互換 32bit CPU |
(マルチプロセッサ対応) ・Xeon シリーズ ・Xeon 5000 系 ・Core 2 Duo |
(マルチプロセッサ対応) ・Opteron 8000 / 2000 / 1000 ・Athlon 64 FX-60 ・Athlon 64 X2 ・Turion 64X2 (ノート) |
|
- | ・Core 2 Quad (4コア) ・Core 2 Extreme ・Pentium Processor Extreme Edition ・Pentium D |
||
デュアルコア 32bit CPU |
・Core Duo (Mac mini) (iMac は Core 2 Duoへ移行) |
- | |
シングルコア 64bit 互換 32bit CPU |
G5 生産中止 |
・Pentium 4 Extreme Edition ・Pentium 4 HT ・Pentium 4 ・Celeron D ・Celeron M (520のみ) |
(マルチプロセッサ対応) ・Opteron 800 / 200 / 100 ・Athlon 64 FX ・Athlon 64 ・Sempron ・Turion 64 (ノート) |
32bit CPU | G4 生産中止 |
・Pentium 4 ・Celeron D ・Core Solo (モバイル) ・Pentium M(モバイル) ・Celeron M(モバイル) |
・Athlon XP / MP ・Sempron ・Duron |
ここでは詳しくは述べませんが、CPU は四半世紀の間、 8bit → 16bit → 32bit と移行してきており、パーソナルコンピューティングの分野では、2003年 9月 AMD64 の登場、2005年 Windows XP 64bit 版がようやく出荷され 2005年は 32bit → 64bit 移行への節目の年となっています。
XP Professional 64bit 版 を導入しても 64bit 対応アプリケーション、ドライバが出揃わない現状では、64bit 処理のパフォーマンスを引き出すことは出来ません。
多くの 32bit アプリケーションは既に十分なパフォーマンスが得られており、XP Professional 64bit 版上でも動作します。通常用途では特に必要性は感じられず、 64bit への移行は徐々に進んでいくものと思われます。
AMD は 従来の 32bit CPU に 64bit 命令を拡張する方法で従来の 32bit CPU との互換性を確保した、つまり、 64bit 互換 32bit CPU を 2003年 下四半期には出荷していました。(AMD64)
これに対し、Intel が採用したアプローチは、 ※純粋な 64bit CPU で、従来の 32bit アプリケーションとの互換性がなかったため、一般市場に受け入れられる事はありませんでした。(エミュレートで動かす方法であったため、動作が実用に耐えないほど重い)
※ 現在は サーバ市場向けのCPUで 一般市場には出荷していない
後に、互換メーカーである AMD と同じアプローチを採用したため、現在では、Intel が一般市場に出荷している 64bit CPU は、従来の 32bit OS 、32bit アプリケーションと完全な互換性があります。
マイクロソフトの 64bit 版 Windows の開発・出荷が遅れたのは、Intel を待っていためで、結果的に 3年近くも 64bit 移行時期を遅らせる結果を招きました。
既に、ワープロや表計算などのビジネスアプリケーションの分野では十分な性能が得られており、64bit による恩恵はありません。また、グラフィックスの分野でも 2GHz を超える CPU であれば十分なパフォーマンスが得られているため、なければ困るというものでもありません。
64bit 環境では、扱えるメモリ空間が広がるため、更に巨大なデータの処理が高速に実行できるようになる訳ですが、パーソナルコンピューティングでこのような処理が求められる分野は、三次元コンピュータグラフィックス など複雑な計算を行う一部の限られた分野です。
2007年 1月 現在、流通している CPU の殆どは 64bit 互換 32bit CPU であり、従来の 32bit CPU は徐々に姿を消していきます。これらの点を考慮してパソコン、OS を選ばれると後で後悔しないで済みます。
64bit CPU が搭載されたパソコンが必要であり、従来の 32bit CPU が搭載されたパソコンでは動作しませんので注意が必要です。
64bit OS | 32bit OS | |
---|---|---|
64bit 互換 32bit CPU | ◎ | ○ |
32bit CPU | × | ○ |
Windows では、XP Professional x64 Edition が 64bit OS になります。OS X では、10.3 (Panther) から カーネルが 64bit 化されており、OS X Tiger (10.4) で更に 64bit 化が進んだとされています。(実際の所は一部の API で問題を抱えている)
基本的に、64bit 版 Windows 2003 / XP 上で 従来の 32bit は問題なく動作します。一部、例外もあります。詳細は以下を確認して下さい。
64 ビット版の Windows Server 2003 と Windows XP での 32 ビット プログラムの互換性について
64bit CPU & 64bit OS 環境下で本来のパフォーマンスを出すには、アプリケーション自体が 64bit に対応している必要があります。また、64bit アプリケーションは、従来の 32bit OS では、実行させる事は出来ません。64bit OS が 32bit CPU で動作しないのと同じです。
64bit OS | 32bit OS | |
---|---|---|
64bit アプリケーション | ◎ | × |
32bit アプリケーション | ○ | ○ |
64bit CPU をお使いで、従来の 32bit OS (Windows XP シリーズ)を使用されている方は、Windows XP Professional 64bit Edition にアップグレードすることで、パソコンが本来持つ性能を生かせるようになります。
高嶺の花だった CPU 並列処理技術が、現在では 一般のパソコンにも搭載されるようになりました。 Apple の Macintosh は全ての Macintosh にデュアルコア CPU を搭載し、Mac Pro シリーズでは デュアルコアのマルチCPU を搭載した 4Way 仕様になっています。
マルチ プロセッサと呼ばれる環境は 1台のパソコンに 2つ以上の CPU を搭載したコンピュータの事で、従来からサーバー、3Dワークステーション分野で使用されています。
一つの基盤(マザーボード)に複数のCPU を搭載するため、メモリを共有するための設計が複雑で基盤が高価であり、また、メモリにも高度なエラー訂正が求められるため高価なレジスタードメモリが必要になります。そのため、2×CPU であっても個人では手が出せないほど高価なパソコンになります。
また、CPU が複数あるためライセンスの問題も発生します。3DCG においては、1CPU 毎にレンダラ-のライセンスを購入しなければならない場合もあります。また、Windows XP HomeEdition では 1×CPU にしか対応していないため、XP Professional を使用する必要があります。
デュアルコアとは、1つの CPU に二つのコアを詰め込んだタイプの CPU で、上記、マルチプロセッサの 2×CPU に相当する並列処理を 1つの CPU で実現する技術です。
このため、基盤の設計が簡単で従来のメモリが利用できるため、安価に2つの並列処理環境を手に入れることが出来ます。また、同じ 2スレッド レンダリングでも上記Dual プロセッサ (2×CPU) と比べた場合、1CPU の扱いとなるためライセンスの問題は発生しなません。しかも 2×CPU に比べ処理が効率的と言われています。
このようなデュアルコア技術が出てきた背景には、1CPU 辺りの のクロックスピードが頭打ちになってしまったためと言われています。(発熱・消費電力)
巷でメインストリームと言われる層は、このデュアルコアCPU へ移行しつつあります。映像編集やエンコーディングを行う方、3D グラフィックスをされている方には、従来の高価なマルチプロセッサ、Windows XP Professional を使用しなくても 2×CPU 以上の恩恵が得られます。
Apple は iMac と Mac Pro というラインナップに変更しています。本来、画像処理や Web コンテンツ制作、DTP といった2D グラフィックスが中心となるデザイナーが使用するモデルは、Mac Pro (4way) に移行しています。
家電志向がさらに強まる傾向があり、これまで Apple を支えてきたデザイナーには反感を買うラインナップ構成と言えると思います。
これまでの Apple を見ていると、とにかくデザイナーには 30万円以下ではパソコンを提供したくないという思惑があるような気がします。スペック的に、Apple が得意とするグラフィックデザイン分野では 4 way は必要なく、Core Duo で十分過ぎるパフォーマンスが得られますが、iMac しかないのは頂けません。
上記、iMac に相当する Athlon 64X2 、Core 2 Duo といったデュアルコア プロセッサ を搭載したパソコンです。従来の デュアルプロセッサ 以上の性能を 1つの CPU で実現します。2Dグラフィックスにはオーバースペックな気もしますが、3D グラフィックス デザイン分野においては、低価格で利用できるワークステーションになります。
iMac は液晶一体で液晶サイズが小さいため、グラフィックス用途には向きません。拡張性が乏しい家電パソコンです。
ビジネスアプリケーションやインターネット、DVD 観賞がメインであれば、Celeron D や Sempron とそれなりの性能を持つビデオカードがあれば十分です。このラインナップは、右のリンク先からカスタム メイドを注文する事が出来ます。
上記、デュアルコア CPU を 2つ以上、搭載可能なパソコンも存在します。 Intel では Xeon プロセッサ、AMD では Opteron プロセッサがマルチプロセッサに対応しています。つまり、4スレッドで実行可能な環境です。
複数の CPU を利用する点は、従来のデュアルCPU と同じで、高価なレジスタードメモリが必要となります。また、2×CPU に対応する Windows XP Professional 、又は、それ以上に対応する Windows 2003 Server が必要となり、非常に高価です。
サーバー用途か、3Dレンダリング用途で使用されます。このようなシステムは非常に高価で、一般の方が使用する CPU 、パソコンではありません。
Macintosh の上位ラインナップでは、デュアルコア Xeon プロセッサを2機搭載しています。この場合、4つの 並列処理が行える事になります。割高感のある Macintosh ですが、DDR2レジスタードメモリ、4Way でこの価格は、Windows パソコンに比べ割安感があります。
3D グラフィックス分野、映像処理においては高い生産性を確保できますが、2Dデザイン分野では明らかにオーバースペックで性能を出し切れるソフトはありません。
Windows PC/AT 互換機の場合、Xeon デュアルコア CPU 、マルチプロセッサ環境を安価に構築したい場合、カスタム メイド可能なBTO パソコンがお勧めです。
PC/AT 互換機で、BTO ショップでは TWO がカスタマイズの幅が広くお勧めです。左のリンク先は 上記、Mac Pro に相当する 4 Way 並列処理可能な ワークステーション カスタム オーダーが可能です。
2×CPU のマルチプロセッサでは、Windows XP Professional が必須で、64bit の恩恵を受けるには、Windows XP 64bit Edition を選ぶ必要があります。
Windows は、一般家庭向けに、セキュリティ機能を制限し、マルチプロセッサ(複数のCPUによる並列処理) に未対応の HomeEdition を販売していますが、XP Home Edition を購入する場合は注意が必要です。
CPU | Win 2003 Server |
XP Professional |
XP HomeEdition |
OS-X Tiger |
---|---|---|---|---|
OSが認識する 物理的な CPU の数 |
最大8つ | 最大2つ | 最大1つ | 選択肢はない 現状は 2つ |
32bit CPU の時代は Athlon MP や Xeon という デュアルCPU (2×CPU) という選択肢しかありませんでしたが、デュアルコアでは 1×CPU であるため、XP HomeEdition でも利用が可能です。
Apple の Macintosh に搭載される OS-X Tiger (10.4.x) は、Windows の XP Home Edition に相当する ラインナップはありません。Windows XP のようにセキュリティレベルを落とすような制限もなく、価格もビジネスユーザ向けの XP Professional (約 4万円) より安価です。そのため、デュアルCPU Xeon (4Way)でも割安感があります。
マルチプロセッサ や デュアルコア といった並列処理の恩恵は、二つのパターンがあります。利用者にとっては全く恩恵を感じない(特にビジネス用途)場合があります。
報道されているような単純にCPU の性能が2倍になる先進的な技術ではなく、どちらかというと 1CPU 辺りの性能向上が限界に達したための苦肉の策と考える方が自然です。
並列処理が可能な マルチプロセッサやデュアルコアCPU 環境において、処理速度の向上が得られるのは、並列処理に対応したアプリケーションを使用する時だけです。
このような並列処理に対応したプログラムは、現状では用途が限られています。特に自動でコンピュータが処理を行う計算に利用されます。
いずれも共通するのは、コンピュータが自動的に行う処理に対してであり、通常の作業に関しては、1つの CPU (1スレッド)が処理します。そのため、並列処理により体感速度が向上するわけではありません。また、どの程度の処理速度向上が望めるかはプログラムの出来次第という事に注意する必要があります。
3D グラフィックスの分野の現状ではモデリング用途には恩恵がありません。しかし、高密度のポリゴンリダクションなどのプログラムが対応する事で得られる恩恵は考えられます。OpenGL などの API がドライバの改善でパフォーマンスが向上する可能性も考えられます。ゲーム用途のビデオカードではドライバによって恩恵があるようです。
ビジネスアプリケーションを使用しているビジネスユーザにとっては無用の長物、無駄な買い物となる可能性が高いです。ただ、出荷を控えている VISTA が デュアルコアCPU を見越して無駄なリソースを食いつぶす可能性もあるので、VISTA のためにデュアルコア CPU を選択しなければならない状況になるかもしれません。
並列処理で得られるもう一つの恩恵は、処理延滞時間の緩和です。1CPU の処理だと処理中に他の作業を行おうとすると、動作が遅くなります。しかし、OS が複数の CPU を認識していれば、使っていない CPU を使用して処理を行います。
そのため、処理の延滞時間が緩和されます。条件は、使用するアプリケーションが上記、並列処理に対応していない場合に限られます。
特に、複数のアプリケーションを同時に立ち上げて作業する用途に適します。しかし、アンチウイルスやパーソナルファイアウォールなど、バックグラウンドでの処理が前提のアプリケーションでは、CPU を使い切らないように工夫されている事が殆どであり、現状では実感するほどのメリットはありません。
バックグラウンドの処理をどの程度、割り当てるかはアプリケーション次第であり、今後、並列処理を前提とした機能が提供される可能性や、あいたCPUを効率的に使用するアプリケーションが登場する可能性もあるため、末永く使えるといった将来性は期待できると思います。
ゲームでは、計算に時間のかかる物理計算を一つのCPU で実行させる事で高度なリアルタイムレンダリングを高速に使用するといった使われ方もあります。
十分処理速度に満足している人にも、とにかくプログラムを肥大化させ処理を重くし、必要のない人にも買い替えを迫るといった方向へ流れが向いているような気がして腹立たしいです。VISTA や OS-X を見ていると特に。