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CMS によるサイト運用のメリットとデメリット

WordPress に代表される CMS によるサイト運用を検討する上で、最初に知って置かなければならないのは、CMSのメリットとデメリットです。CMS には大きなメリットと同様に、明確なデメリットが存在するからです。

CMS によるサイト運用管理のメリットとデメリット

HTMLエディタなどソースコードを直接編集する、従来のサイト制作、運用と比較した場合の CMS のメリットとデメリットについて纏めてみました。

メリット

メリットの大半は、これまで手間だった作業が簡素化される点にあります。これが情報の迅速な公開につながります。どのようなコンテンツを配信するサイトが適しているかは、想像してみてください。

HTMLコーディングに関する知識や専用ソフトを必要としない

CMSによるサイト運用は、ブラウザの管理画面から行い、HTMLはシステムによって生成されるため、HTMLに関する知識のない人でも、サイトの運用、管理が行えます。多くのCMSは、複数のサイト運営者が同時にコンテンツを作製、更新できる仕組みを備えています。

メリットはこれに尽きると思います。従来のHTMLでサイトを構築する場合、それを依頼しても、運用する場合は、サイト納品後のサイト運用は、HTMLエディタを使うか、そのための学習が必要です。また、原稿を渡してサイト更新まで代行する場合もあります。この場合、コンテンツを追加する度に制作コストが発生するので、それらを削減できるのは企業から見れば非常に魅力的なメリットです。

RSS や Atom フィード機能を備える

RSS や Atom は、サイトの更新情報をサイト購読者に知らせる仕組みですが、検索エンジンにも見つけてもらいやすくなります。多くの CMS はこれらの機能が提供されています。記事を投稿すれば、自動的にRSSでも配信されます。

ブログには当然のようにある機能ですが、HTMLエディタを利用して書く場合は、これらは自分で別途作成する必要があります。迅速な情報を公開する点で CMS のサイト運用は優れています。

過去に以下の様な記事を書いていますが、別途、この様なことをする必要が無いと言うことです。
参考 => 誰にでも手軽にGoogle Sitemapサービスを

トラックバック機能を持つ

トラックバックとは、紹介記事を書くと相手に通知される、いわば相互リンクを自動化する仕組みで、ブロガー同士で様々な意見を共有しあうための機能です。これにより、サイトを閲覧している人に、同じテーマで様々な人が書いた記事を参照することが出来ます。ブログCMS MovableType で初めて実装されました。

このトラックバック機能は、本来の使われ方がされないことも多く、例えば、スパムやご挨拶みたいな、意味のない相互リンク、被リンク数を増やすことそのものを目的にする迷惑行為が後を絶たないのも事実です。

サイト訪問者に提供するコンテンツの内容によっては、非常に魅力的な仕組みですが、このような仕組みを標準で備えるのも CMS の特徴です。

WordPress では目的外使用を避ける ピンバックという機能を備えています。この機能に関心がある方は調べてみてください。

デメリット

メリットの裏返しにより発生するデメリットがある点にも着目して下さい。

システムの保守管理が発生する(保守管理)

CMS によるサイト運用は、アップデート等の保守管理作業が発生します。CMS には深刻なセキュリティホールが度々見つかります。これを放置するとサイト改ざんや情報漏洩をまねきます。

ホスティングサービスなど1台のサーバーを共用しているようなケースでは、管理の行き届いてないサーバーだった場合、同じサーバーのデータベースを利用しているサイト運営者全てに影響が出る可能性も否定できません。これは、サイト運営者がいくら注意しても防ぎようのない問題です。

バックアップが複雑(保守管理)

FTPクライアントを使ってコンテンツをアップロードする場合は、常にローカルにデータが残りますが、ブラウザによりコンテンツを生成するCMSの場合は、サーバー上のデータベースに保存されます。

そのため、サイトの内容をバックアップするには、何らかの方法でデータベースをローカルにダウンロードする必要があります。また、データベースのバックアップには複数あり、どのような方法が提供されているかは、レンタルサーバーから提供するサービスに依存します。

例えば、サーバー管理者から phpMyAdmin や phpPgAdmin などのGUIツールが提供されている場合は、それらを利用してデータベースをローカルにダウンロードしてバックアップします。初めての方には敷居が高いと思われます。

ハードウェアの障害に備えて、常に異なるハードウェアにバックアップを行う必要がありますが、サーバー管理権限がないホスティングサービスの場合は、このような自動バックアップに関してはかなり制約があります。

ログインを求めたり、個人情報を扱うようなショッピングサイトなどの場合は、これらのアカウント情報に含まれる個人情報も、コンテンツと同様にデータベース内に保存されているため、フリードライブを利用して外部のサーバーでデータベースをバックアップする場合は、情報管理の面で不安が残ります。CMS を前提としたサイト運用を考えた場合は、障害に備えたバックアップをしっかり行っているホスティングサービスの再考も視野に入ります。

動作要件を満たす必要がある

CMS を設置するサーバーが動作要件を満たしているか、サーバー管理者に確認する必要があります。HTMLファイルをFTPでアップロードするサイト運用では発生しない作業です。

ホスティングサービスによっては、人気の高い WordPress がセットアップ済みであることを謳い文句にしている所もあります。ただし、ほとんどは保守管理作業は自分で行う必要があります。

生成されるソースコードに自由度がない(運用)

CMS は HTMLをシステムが出力するため、ソースコードに対して自由度がありません。HTMLの知識がなくてもサイトを構築できるのが、CMS の大きなメリットであるため、これもメリット裏返しのデメリットになります。

これが特に問題になるのは、SEO対策においてです。Google などの検索エンジンは、文書構造を解析して検索結果の優先順位を決めます。

html を正しく記述する事で、文書構造を明確にすることで検索結果に正しく反映されますが、CMS によっては、本来の html の記述方法を無視するものが多く見受けられます。

中には W3C に準拠した美しい HTML を出力する事を売りにしている CMS も存在するぐらいです。

オリジナリティーがなくカスタマイズが必須(サイト開発)

これも前述したソースコードに自由度がないこととも関連します。CMS のデフォルトのデザインは素っ気ないものです。現在、文書構造は HTMLに記述し、デザイン要素は CSS に記述するように W3C でルールが明確化されています。

オリジナルのデザインを CMS で実現するには、CSS を編集してレイアウト、デザインを行う必要があります。これは CMS に限った話しではなく、HTMLの知識に加え、より高度な専門知識が求められます。

現在、テーブルタグなどを利用した HTMLに依存するデザインは推奨されていませんが、HTMLを直接編集するDreameWeaverなど従来のやり方では、やろうと思えば出来ます。(そのようなサイトは検索エンジンに嫌われますが)

CMS の場合は、CSS によるデザインの変更が前提になるため、自分でオリジナルのデザインを作成しようとすると、CSS に対する高度な知識が求められるため、デザインのカスタマイズはハードルが高くなります。

CMS のデザインのカスタマイズは、そういうWeb制作を請け負っている会社に依頼することになります。例えば、オリジナルデザインで WordPress によるサイトを立ち上げる場合、1サイトあたり 30~40万円が相場です。

WordPress など豊富なデザインテンプレートを提供する CMS も存在しますが、テンプレートの中身は CSS がウエイトを占めているので、CMSが基本で出力するソースコードや提供するインターフェイスによっては、CSS で制御可能なデザイン要素にも差があることも考えられます。

また、デザイン要素とは別に、CMSが作り出す階層構造については、CMSの設計思想が色濃く反映されますので、ブログやニュース、行政サイトといったコンテンツに応じてCMSが開発されているのが現状ではないかと思います。

補足:CSS と HTML を分離することで検索エンジンは文書構造を理解しやすくなります。その検索エンジンに好かれ易い点だけを見て、CMS は SEO に優れている、という人もいます。しかし、自分で CSS を記述して HTMLを正しく記述できる場合は、おかしなHTMLを出力する CMS よりも、さらに好かれやすいということになるので CMS に限ったメリットではありません。知識さえあれば、全てのソースコードに制約のない従来の方が SEO においては最強と言えます。HTMLよりCMSのほうが SEO に強いという認識は、比較する対象も、認識も誤りです。

補足:一般の人から見れば、DreamWeaver や HTMLビルダーと言ったオーサリングツールを利用すれば、簡単に CSS や HTML の知識が無くても、Webサイトを構築出来るわけではありません。あくまで HTML や の知識を前提とした上で、作業の効率化を図るためのデザイナーやサイト制作を仕事にしてる人が使うツールという位置づけになります。

サイトリンク、階層構造は、扱うコンテンツの内容に大きく影響されますし、また、階層構造は、デザイン設計、見た目に影響する部分に大きく影響するという普遍的な大原則があります。

これらの理由から、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)は、扱うコンテンツに適した様々なタイプのものが世の中に溢れているわけです。

そして、そのデザインや階層構造に対して何処まで修正可能なインターフェイスを提供しているかは、その CMS の設計思想により大きな差があります。極端な場合は、一切出来ないと考えて差しさえないものもあります。

カスタマイズのために提供されるインターフェイスにしても、CMS が出力するコード全体にほぼ手を加えられる柔軟性の高いものから、ドラッグドロップで直感的にレイアウトや、デザインを簡単に変更出来るものも存在します。

前者は柔軟性が高い分、一般の方には敷居が高いのに対して、後者の直感的なカスタマイズ性を備えた CMS は一般人には受けがいいのですが、逆にデザイナーから見れば、細かいデザインが出来ない場合もあり、避けられる傾向があります。

負荷が高い(運用)

CMS は、サイト訪問者の要求に応じて、データベースに格納された情報をその都度呼び出して html コードを出力します。

これらの処理はサーバーのCPUに高い負荷を掛けます。一つのサーバーを複数人数で利用するホスティングサービスの場合、共用数が多いと、表示もままならない程、サイト訪問者にストレスを掛けてしまいます。

URLを見れば、動的に出力されたURLなのか、静的なURLなのかある程度見分けがつきます。安価なホスティングサービスほど共用数が多いため、CMS の運用は非常に厳しいものがあります。CMS によるサイト運用に切替えたことで、サイト訪問者にストレスを駆けてしまい、アクセス数が激減するリスクも考えられます。

CMS には静的な htmlを出力して、サーバー負荷の低い従来のHPと同様の運用が出来るものもあります。

ただし、その場合でも、サイト運営者がコンテンツを作成するときは、サーバーのCPUに高い負荷を掛けるので、安価なホスティングサービスの場合は、CMSを操作するサイト管理者、運営者にも高いストレスを強要することになります。

CMSのセキュリティに関する補足

WordPress はオープンソースのCMSですが、商用のCMS を含めて最も世界で利用されている、最も成功した CMS といえます。それを裏付けるように開発元のメンテナンスも行き届いています。

これらの理由から WordPress は安全だという人と、いやいや、多くの人が利用しているからこそ、目が付けられるので危険だ、という全く逆の声も聞きます。

  • 利用者が多く、ターゲットにされるから危険だ
  • いやいや、セキュリティメンテナンスが行き届いているから安心だ

いくら開発元が適切にセキュリティに関する更新を行っていても、サイト運営者が放置すれば意味もありませんし、逆に利用者数が仇となり、標的にされる確率は高くなります。

逆に利用者数が少ないマイナーなCMSやプログラムが安心なのかといえば、知られていない未知の問題を抱えているリスクを内包しているかも知れませんし、商用利用としてその点の安全性を担保しているケースも考えられるので、無料、有料という視点でも安全性を一概に決めつけることは出来ない不毛な議論です。

ただ、利用者が多ければ、それほど開発元にフィードバックされる情報も多いのは確かで、より堅牢な方向性で開発が進む期待感は持てます。その意味では安心といえるかもしれませんが、それはサイト管理者、運営者が、保守管理を怠らないという前提の話です。

そのことと、セキュリティが堅牢であることを混同し、誤った認識で安心することで保守管理がおろそかになるケースもあるのではないかと思われます。現にそう言うことを聞かれたことがあります。初めて CMS よるサイト運用を考えた場合は注意が必要です。

ユーザー参加型のサイト運用について

WordPress は MovableType と同様の時系列でコンテンツを整理するブログ系のCMS にカテゴライズされますが、CMS と同様に、Webサーバーで動作するシステムには ユーザー参加型のものもあります。

誰でも自由に意見が書き込める掲示板スタイルのサイト運用を考えた場合は、ユーザー登録を求めたい場合もあるでしょうし、ショッピング系のサイトでは利便性の観点からユーザー登録をお願いしたい場合もあるかもしれません。

そのサイト利用者に、他のサイトのサービスでも同じパスワードを使いまわしているようなネットリテラシーのない人がいた場合、特に重要な情報を扱わないサイトでも、そこから漏えいした個人情報というか、入力情報が外部に漏えいしたら、利用者に二次被害を与える可能性も否定できません。

  • 「ID や パスワードを使いまわしている方が悪い」

と言えば、それまでの話しですが、そのような利用者目線にたった配慮が求められるという認識は必要だと思います。

特にショッピングサイトの運用を考えた場合は、情報漏えいによってサイト運営者が社会的な信用を失う大きなリスクに直結するおそれがあることは認識しておく必要があり、これらの情報が格納されているデータベースの扱いに慎重さが求められることは想像に難くありません。

CMS のメリットとデメリット まとめ

どうでしょうか。CMS のメリットは非常に魅力的ですが、引き替えに、それに負けないぐらいのデメリットも存在します。

ニュースサイトのように、更新頻度が高く、大人数でコンテンツを制作する必要があるサイト運用の場合は、CMS のメリットは何ものにも代え難いと思うかもしれませんし、このサイトのように不定期で参考書的なサイトでは、発生する保守管理業務がそれに見合っているのか、逆に負担に感じるかもしれません。

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クラウド型のCMSサービスについて

最近ではクラウド型としてCMSを提供するサービスも存在しています。CMS を自分でサーバーにインストールすれば、CMS(コンテント マネジメント システム)に対するセキュリティアップデートなどの保守管理業務が発生します。

しかし、クラウド型の場合は、システムはサービスを提供している事業者のものなので、サイト運営者側に CMSのセキュリティアップデートなどのシステムに関する保守管理作業が発生しませんので、サイト運営者は、コンテンツの制作に専念することが出来ます。

CMS 保守管理をアウトソーシングする、という一件、新しい形態のサービスと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。発想的には、巷にあふれている無料のブログサービスと全く同じです。

無料のブログサービスをつかって、個人のブロクを書いている方も多いと思いますが、ブログシステムのアップデートは、そのサービスを提供している事業者が行っているので、サイト運用者が行う必要はありません。

無料でシステムを提供している業者の多くは、ブログに表示する広告で広告収入を得ていますが、これらは商用利用をターゲットにしたサービスであるため、広告は表示されず、独自ドメインの運用が可能ですが、その多くは有料です。

中でも通信大手の KDDI が提供する Jimdo は、カスタマイズ性が高く、ネットショップに関する機能も提供しています。

特にスマホやタブレット端末にも最適化されているのも人気の高い理由です。

期間限定のイベント的なサイトを即時たちあげたい、という場合に非常に適していると言えます。

クラウド型のCMSのデメリット

このようにクラウド型を歌っている CMS サービスは、ここで説明したデメリットの多くを解消しますが、クラウド型特有のデメリットもあります。

提供される以上のことが出来ない

あたりまえですが、自分で CMS を選んで導入するわけではないので、提供されている機能以上のことは出来ません。気に入らないから CMS を入れ替えることは、当然ですが出来ません。

クラウド型CMSサービスを選ぶときの重要なポイントになります。無料版のサービスを登録してみて実際に試してみると良いと思います。

ドメインの移管について

レンタルサーバーと、独自ドメインを個別に取得するより手軽ですが、サーバーの移転の必要が生じた場合、独自ドメインの移管を確認しておかないとトラブルのもとになります。ちなみに Jimdo については以下を参考にして下さい。

参考:Jimdoで取得したドメインを他社へ移管する

サイト運用が軌道に乗り始め、提供されるCMSに満足できなくなった場合は、ホスティングサービスのように CMS を変更することは出来ませんので、この場合はサイトを移転するしかありません。

ですので、クラウド型のCMSで独自ドメインによる運用を考えた場合は、これらの手続きがどうなっているか、事前に確認しておくと後々後悔しません。

引き続き、 WordPress を例に、CMSの導入プロセスと求められるセキュリティの違いについて補足し、具体的なセットアップの手順を説明します。

CMSサイト制作環境の構築

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