ここからは、サイト制作会社が CMSによるサイトを作成する上で必要な開発環境を構築する、という視点で、CMS がサーバーでどのように動作しているのか見ていきます。
また、前のページでCMSのデメリットに触れましたが、日頃から保守管理をしっかりしていても、絶対の安全を確保する事は出来ませんが、リスクを大幅に低減することは出来ますので、サーバーをレンタルして CMS によるサイト運用を考えている方の視点も意識しています。
実際にサーバーをレンタルして、そこでどのようにCMSが動作するのか、セキュリティを考える上で、仕組みを知る事は第一歩になるからです。また、どのような点に着目して、サーバーレンタル事業者、あるいはサービスを選べば良いか、判断の一助にもなります。
CMS は設置すれば直ぐに運用は出来ますが、見た目はオリジナリティがない上に、世の中は同じテンプレートを利用したサイトで溢れているので、訪問者に対する認知度にも影響するので商業目的の場合は特に敬遠されます。
CMS は、従来の HTML を直接記述する方法と違って、HTML は CMS が出力します。そして、出力される HTML は、本来の文書構造のみであり、デザイン要素は CSS に分離しています。
ですので、CMS でサイトを構築する場合、デザインのカスタマイズの大半は CSS の編集作業になります。CMS によるサイトデザイン、構築作業は、実際に CMS が動作する環境をローカルに準備する必要があります。
サイトの制作、CMSをカスタマイズしてデザインを変更するには、その CMS が動作する環境が必要になります。
仕事などでサイト制作を請け負う場合は、守秘義務の観点から公共のネットワーク(インターネット)を利用して、それも複数のユーザーが利用しているホスティングサービスを利用するのは守秘義務の観点で問題があります。
CMS を利用した制作環境の構築には、LAN内にサーバーを構築するか、または、クライアントのパソコン自信にセットアップする方法が考えられます。
.デザイナーが個人で請け負う場合は、制作に使用するパソコンに、直接Apache Webサーバー、MySQL、PHP、Perl(CGI)、FTPサーバー、phpMyAdminをパッケージ化したXAMPPの導入をお奨めします。
Windows や Mac OS-X 版にもインストーラーで提供されているので、手軽にPHP、Web開発環境を導入する事ができます。本稿では、この視点については述べられていません。後述する LAN内のサーバーに関する内容になります。
制作会社やオフィス環境、あるいは専門学校などでは、学生や制作スタッフに提供するそれぞれのパソコンに、CMS が動作する環境をそれぞれ導入するのは、無駄が多く、管理やコスト面で適切ではありません。
そこでレンタルサーバー事業者が提供してるのと同等のサーバーをLAN内の環境に設置する必要があります。
本稿で説明している内容はこちらになります。主に制作スタッフに提供する開発環境の構築を目的に、サーバー構築、サーバー管理者の視点で書いていますが、検索エンジンで来られる CMS でサイト運用を考えている一般の方にもわかる内容にしています。仕組みを理解することで、セキュリティに対する認識や、その後の保守管理に対する姿勢が違ってくるからです。
CMS をLANのユーザーに提供するために必要なサービスは以下の通りです。CMS の動作要件を満たしている必要があります。構築にあたってはサーバー運用実績の高い OS を選定するのがベターです。
phpMyAdminは、MySQLデータベースをブラウザを利用した GUI で操作するツールです。SQLデータベースと連動して動作する CMS では、情報の全てはデータベース内に格納されます。
バックアップや復元など、SQLコマンド操作はデザイナーに別のスキルを求める事になるので、GUI で操作出来る phpMyAdmin や phpPgAdmin などのツールを提供する必要があります。
ちなみに本稿の内容は CentOS 6.x を使用し、保守管理のし易さを最優先に、パッケージ利用を前提とした保守管理ポリシーで書いています。いずれも、ソフトウェアには一切の費用を必要としません。最低限、必要となるコストは、1台のPC(ハードウェア)とランニングコスト(電気代)です。
本稿ではせいぜい10数名のスタッフ規模を想定していますが、学内LANで学生に提供するような規模が大きく、数年で入れ替わりのあるケースでは、ユーザー管理の方法から検討する必要も視野に入れる必要があります。
本稿はLAN内の開発環境の構築が目的なので、インターネット側からの接続は想定していませんが、外部のスタッフにインターネットを経由して開発環境を提供する場合は、上記に加えて以下の仕組みを提供する必要があります。
VPN など仮想ネットワーク環境を除いて、社外のネットワークからの接続を認める場合は、通信経路が暗号化されている必要があります。
つまり、サーバーレンタル事業者が提供するようなホスティングサービスが提供しているのと同等の安全性が求められるサービスを提供する必要があります。本項では対象外ですが、必要なコンテンツはこのサイトで紹介しています。
ちなみに人気のCMS、WordPress に対応していますと謳っているホスティングサービスで、このような仕組みを提供していないところがあります。そのCMSで扱う情報によりますが。この世界は安かろう、悪かろう、なので、CMS によるサイト運用を考えた場合は、利用中のレンタルサーバーを変更するところから考えなければならないケースがままあります。
次のページからは、LAN内に設置されたサーバーの管理者が CMSを導入する上で必要な作業について説明します。その次にサーバーを利用するクライアントの立場で CMS を導入、という流れで説明を続けます。